フランスの共済組合がコンテナ活用でミドルウェアのデリバリーに要する時間を 80% 短縮

Mutuelle Générale de l'Éducation Nationale (MGEN グループ) はフランスで 400 万人以上に社会保障サービスを提供している、同分野における主要な組織です。競争力を維持するため、MGEN の IT 部門は複雑で高コストな Java™ アプリケーションサーバー・プラットフォームの置き換えを検討していました。Red Hat JBoss Enterprise Application PlatformRed Hat OpenShift 上で実行することにより、MGEN の IT 部門はスケーラブルで安定したテクノロジーとコラボレーションを重視する DevOps アプローチを活用できるほか、最新の技術フレームワークへ迅速に適応することも可能となりました。これにより、同グループは新しいサービスを求める顧客の要求へ効率的に対応できるようになりました。

イメージコンテナ


メリット

  • デリバリーに要する時間を 80% 短縮
  • 要求の規模とスピードに対応しながら、安定性とカスタマーエクスペリエンスを向上
  • 統合された柔軟なテクノロジーで、コラボレーションを重視する DevOps アプローチをサポート

競争の厳しい市場でリーダーシップを維持する 

MGEN グループ (Mutuelle Générale de l'Éducation Nationale) はフランスの社会保障分野における主要な組織です。MGEN は健康、安全、福祉、介護分野で 400 万を超える人々を支え、複数の政府省庁の職員向け社会保障の運営と医療サービスの提供を行う、初の公的な医療および福祉共済組合です。

競争の激化に対処するため、MGEN は革新的なデジタルサービスの開発を検討しました。しかし、既存の Java™ Enterprise Edition (EE) (現 Jakarta EE) アプリケーションサーバー・アーキテクチャを用いる場合、既存サービスのデジタル化や新規デジタルサービスの作成に膨大な労力が必要でした。 

「新しい技術フレームワークの導入は高コストなうえ、特に新しいバージョンの Java やミドルウェアであれば 1 年がかりの仕事になる可能性もあり、技術的問題も多々ありました」と MGEN グループの IT 部門エンジニアリング開発およびミドルウェア統合チームマネージャー Frédéric Roulet 氏は語ります。「新サービスを公開する際、トラフィックの増加に対応できるようスケールアップするため、可能な限り迅速に新サーバーのプロビジョニングとデプロイを実行する必要がありますが、過去にこのようなインフラストラクチャの変更を実施した際は 1 - 2 日必要でした」

MGEN グループの IT 部門は、よりコスト効率に優れたソリューションを求め、コンテナベースのアーキテクチャを構築することを決定しました。この新しいアーキテクチャは、優れたサービス可用性の実現、仮想サーバーまたはベアメタルサーバーへのデプロイ、ソフトウェアの選定、およびバージョン管理をサポートするために使用されます。

Red Hat 製品で中核事業のサービスをコンテナ化

MGEN の IT 部門は、オープンソース・コミュニティのイノベーションの活用を検討しましたが、安定性とセキュリティを確保するにはサポート付きのエンタープライズ向けコンテナ・プラットフォームが必要でした。アプリケーションサーバー・プロバイダーが提供するコンテナ・プラットフォームでは、ベンダーロックインが生じるおそれがあります。そこで PoC の後、MGEN は Red Hat OpenShift と Red Hat JBoss Enterprise Application Platform (EAP) への移行を決定しました。MGEN の IT 部門はサーバー運用に Red Hat Enterprise Linux® を使用していたため、Red Hat 製品には馴染みがありました。 

Roulet 氏は次のように語ります。「Red Hat OpenShift は成熟した包括的なエンタープライズ製品です。API (アプリケーション・プログラミング・インタフェース) ベースで DevOps ツールと統合されているほか、Red Hat のコンテナカタログを通じてコンテナ化されたイメージが豊富に提供されることで、サービス開発の迅速化を助けてくれます。PoC により、Red Hat 製品が私たちに必要なアジリティとスケーラビリティを備えていることが確認でき、価格もわずか数年で投資を回収できる程度でした」 

Red Hat OpenShift は Kubernetes ベースのコンテナ・プラットフォームで、オンプレミス、クラウド、ハイブリッド型インフラストラクチャのいずれにおいても開発者の生産性向上を支援する、堅牢な自動化機能を提供します。MGEN グループの IT 部門は JBoss EAP をコンテナ化されたイメージとして、Red Hat OpenShift 上で実行しています。JBoss EAP はハイブリッド環境向けに最適化された Jakarta EE アプリケーションサーバーで、継続的なテストと開発を支援する最新のコンポーネントを提供して DevOps アプローチを補完します。

さらに、同グループの IT 部門はベアメタルサーバー環境を Red Hat Enterprise Linux から Red Hat Virtualization に移行し、リソースを多用する重要な仮想化ワークロードをスケーリングすることにしました。

MGEN の IT 部門は Red Hat コンサルティングと協力しながら、Jakarta EE フレームワークを JBoss EAP 上で実装するアーキテクチャを設計しました。Red Hat コンサルタントは、JBoss EAP でアプリケーションをコンテナ化して Red Hat OpenShift 上で実行するための指針も提供しました。 

Red Hat コンサルティングの支援のもと、MGEN の IT 部門はこの新しいテクノロジーの本番実装をわずか 10 カ月で達成しました。MGEN のアプリケーション開発チームは段階的なアプローチを経て、Jakarta EE アセットの 90% 以上に相当する合計 175 個のアプリケーションを新しい Red Hat 製品からなる本番環境に移行しました。

「私たちの Red Hat インフラストラクチャは、今では顧客向け Web ポータルやモバイルアプリケーションに API ベースのサービスを提供するアプリケーションのほか、商品から契約、健康保険料など、中核的な内部向けの業務アプリケーションもサポートしています」と Roulet 氏は語ります。

コラボレーション重視の効率的な開発プラクティスとプロセスの導入

ミドルウェアのデリバリーに要する時間を 80% 短縮

Red Hat OpenShift を導入したことで、同グループの IT 部門は開発環境の更新作業をより迅速に行えるようになりました。従来は新しいフレームワークまたはランタイムのバージョンに移行ために 1 年必要となることもありましたが、新しい環境ではわずか 2 カ月で作業を完了できます。 

「Red Hat OpenShift ではコンテナ化されたワークロードにより、JBoss EAP への変更と Jakarta フレームワークの進化に合わせて、常に最新の状態を保ちやすくなりました」と Roulet 氏は語ります。

さらに、MGEN の IT エンジニアリングチームは、ルーチン的なプロビジョニングや運用管理作業よりも、革新的な成果物を迅速に構築、提供することに集中できるようになりました。大規模なサーバー環境ではさまざまなフレームワークのバージョンやコンポーネントに合わせた調整が必要になりますが、Red Hat OpenShift を基盤とした新しい環境では統合に苦心することなく、異なる Jakarta フレームワークやバージョンを実行し、コラボレーションすることが可能です。

「内部チーム向けに小規模の Web サイトを 2 日間で作成できましたが、これは Red Hat OpenShift のおかげです。以前の環境なら、同じプロジェクトに 10 日かかっていたでしょう」と Roulet 氏は言います。

大規模環境で安定性とカスタマーエクスペリエンスを向上

安定性とスケーラビリティの向上により、MGEN グループは変化に迅速に適応しながらカスタマーエクスペリエンスを向上させることができました。同グループは本番環境の移行中にも業務を停止せずに、デジタルサービスの提供を継続できます。

たとえば、新型コロナウイルスのパンデミックによるロックダウンを受けて大幅に増加した、医療費払い戻し処理の要求にも対応できました。

 「パンデミックによるロックダウンの最終段階において主立った問題が発生しなかったことで、Red Hat 環境は変化が激しい状況にもうまく適応できるという確信を持てました」と Roulet 氏は語ります。「要求が急増しても、この環境はアプリケーションの裏側でサービスとコンピューティング能力を調整してすばやく対応します。これは以前の環境では容易にできることではありませんでした。たとえば Red Hat Virtualization では大容量クラスタの追加が容易にできます」

DevOps でイノベーションの障壁を取り除く

技術的なメリット以外にも、Red Hat のソフトウェアを導入してコンテナベースのプラットフォームを構築したことは、MGEN グループの IT 部門でミドルウェア、フレームワーク、アプリケーションなどを担当する各種チームのコラボレーションを助けました。そしてこれらのチームは DevOps アプローチを用いながら、新しいプロジェクトに共同で取り組めるようになりました。

「たとえば Red Hat JBoss EAP の新しいバージョンに移行しようとするとき、チームが集まって変更について話し合うようになりました。この変化は良い結果を出し続けるために本当に重要です」と Roulet 氏は語ります。「Red Hat のテクノロジーは、急速なスケーリングなどから発生する問題の解決を助けてくれます。そのため、私たちはアジリティとコラボレーションを優先する働き方へと適応することに集中できます」

戦略的なビジネス目標を支援するため、さらなる変革を計画

90% 以上の Jakarta EE アセットを新しい環境に移行した後、現在 MGEN の IT 部門はメインの Web サイト mgen.fr の移行に取り組んでおり、その他のコンテナランタイムを Red Hat OpenShift に導入しています。「この重要なプロジェクトは要件が非常に厳しく、Web サイトは常に全機能を利用できる状態でなければなりません。Red Hat テクノロジーなら、その実現を支援できるでしょう」と Roulet 氏は言います。

MGEN の IT 部門は Red Hat ソフトウェアを使用していくつかの新しいプロジェクトにも取り組んでおり、新しい OpenShift ベースのマイクロサービス・プラットフォームの立ち上げもその 1 つです。このプロジェクトでは Red Hat Runtimes を使用してアプリケーション開発プラットフォームを作成し、Red Hat Decision Manager を使用して意思決定ロジックを統合しています。「当社の CIO は、マイクロサービスを使用する API アプローチを開発する重要な取り組みを推進しています。内部 API を構築してから、パートナー向けの API を作成します」と Roulet 氏は述べています。

MGEN の IT 部門では、次のような変更についても検討中です。

  • Red Hat OpenShift 4 が提供するサービスメッシュ・アプローチで標準化して、IT システムの内部サービスメッシュをサポートする
  • Red Hat Virtualization から Red Hat OpenStack® Platform への移行により柔軟なプライベートクラウド環境を提供し、コンテナのサポートを改善するとともに、ベアメタルサーバーのプロビジョニングを自動化する
  • Red Hat Developer Studio から Red Hat CodeReady Workspaces に移行し、コンテナ化された OpenShift ベース・アプリケーション向けの一貫した構成済み統合開発環境 (IDE) を利用する

Roulet 氏は次のように述べています。「Red Hat が提供するテクノロジーとサービスは、実に建設的です。Red Hat とは気持ちよく仕事ができます。Red Hat は一方的に仕事のやり方を押しつけるのではなく、私たちの技術的なバックグラウンドを理解したうえで、ベストプラクティスを共有してくれます。Red Hat は、私たちが戦略的なテクノロジービジョンの実現へ向けて進んでいけるように助けてくれました」

Mutuelle Générale de l'Éducation Nationale (MGEN) について

MGEN グループはフランスの社会保障分野における主要な組織です。複数の政府省庁の職員に対して社会保障を提供する、医療および福祉を扱う初の公的な共済組合であり、医療プロバイダーです。MGEN は健康、安全、福祉、介護分野で 400 万を超える人々を支えています。1946 年に創立された MGEN グループは約 1 万人の従業員を擁し、本部はパリにあります。


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